小 熊 座 2015/6   №361 当月佳作抄
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     2015/6  №361   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    東京のどこも絶壁飛花落花            我妻 民雄

    抱卵の巣を包みゐる波の音           土見敬志郎

    濁流のために立ちたる山桜            渡辺誠一郎

    今生は鶏と生まれて羽抜鶏            さがあとり

    堰越ゆるとき瑠璃色に雪解川           阿部 菁女

    大樹なお齢のありて緑立つ            小笠原弘子

    東京の朧の隅に着所寝              土屋 遊蛍

    夏富士になりかけてゐる空の色         津髙里永子

    小楢の芽山には山の神在す           永野 シン

    鉄瓶のふわりと坐せる弥生かな         髙橋 彩子

    百代は束の間のこと初蕨             蘇武 啓子

    草の芽のあるとき深き一ト呼吸          斉藤 雅子

    花冷えの花は夕暮症候群             春日 石疼

    遠ければ人もうるみぬ春の星           柳  正子

    春の日を詰め放題のランドセル          沢木 美子

    幼霊の空駆けるとき風光る             関根 かな

    ふきのたうほどの苦言を賜りぬ          郡山やゑ子

    一本桜天蓋として村ほろぶ             須﨑 敏之

    花見んと出かけてかぶる花吹雪          岡田 明子

    楢山の耳に転がる初音かな            渡辺 智賀

    花冷映し校庭の水溜り               佐藤 レイ

    本土への二十ノットや春の虹            中村  春

    その下に金輪があり夏の草            大場鬼怒多

    初蝶が昔日の吾知つてゐる            遠藤 志野

    すみれの庭被曝の庭として暮るる         草野志津久

    死に化粧褒めて帰るや菜種梅雨          竹本  仰

    どん底を蜘蛛海星這ふ春の海          椊田 浩子

    初虹やまだ濡れている道祖神           服部 奈美

    黙禱の後列にをりチューリップ           瀬古 篤丸

    フクシマのつくしわらびにふきのたう        竹内 葉子






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