小 熊 座 2015/9   №364 当月佳作抄
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     2015/9  №364   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    萱草の花転生は考えず              小笠原弘子

    帰らざるものばかり見え夏の雨          渡辺誠一郎

    痛みやや遅れて来たり敦盛草          我妻 民雄

    まだ生れぬ梢をわたる夏の風          浪山 克彦

    青葡萄一粒づつに夏過ぎゆく           増田 陽一

    唄ひだす喉の暗さやみなみ風          鯉沼 桂子

    姥捨てのごとく島あり日の盛り          土見敬志郎

    引き波のたしかな力晩夏光            山田 桃晃

    いかづちやもとより吾の中に雷          関根 かな

    深川や馬穴に小判草育て             田中 麻衣

    茂る木の無音が奥を広げおり          清水 智子

    昨日とはコップの気泡夏祭            森  黄耿

    蜻蛉の翅の鉄路を聞くかたち           瀬古 篤丸

    一片の詩も残さずに白蛾死す          渡辺 規翠

    原子炉の臓腑とろけて旱雲            渡邊 氣帝

    青空をふわりとかけて昼寝かな          柳  正子

    百年前の軍靴の音や百日紅           矢本 大雪

    薊咲く排水溝のあしたかな             森田 倫子

    梅雨晴間おはじき程の雀どち           髙𣘺和か子

    田圃なき三浦半島夏燕              武良 竜彦

    一呼吸ごとに鮮らし黴の花            春日 石疼

    ロボットに忘却はなし梅雨の月          村上 花牛

    梅雨茸の類わが耳猫の耳             佐藤 弘子

    日焼子の全身夢の中にあり            杉  美春

    青空はどこまで続くラムネ飲む          斎藤真里子

    庄内やすべての風は青田から          堂園 正広

    みな乳房豊かな家系青山河            四戸美佐子

    忘却の夏沖縄もみちのくも             黒田 利男

    黒揚羽なぜ現し世に迷ひしか           初見 優子





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