小 熊 座 2016/10   №377 当月佳作抄
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     2016/10  №377   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    晩年や祭の底に揺れてゐる                 土見敬志郎

    咲きつづくてふ地獄あり百日紅                我妻 民雄

    胎内で遺児になったと夜蟬鳴く                沢木  美子

    自転車に虹の空気を入れてやる               中井  洋子

    野葡萄の色生むまでのさやぎかな              大澤  保子

    那智黒の硯の墨池天の河                  さがあとり 

    細長くしあはせメリークイン食ひ               津髙里永子

    青葉木菟星座の角に鳴き出せり               増田 陽一

    梅雨あけやハンドソープの泡むくむく             阿部  菁女

    空白は真白にあらず涼新た                  関根  かな

    縁側に御弾き八月十五日                   神野礼モン 

    太陽へ脱げば美し蛇の衣                   斎藤真里子

    月光を孕みて太る蔓茘枝                   大西 陽

    掛軸の小舟漕ぎゆく梅雨の入り               千倉 由穂  

    咲き終り雑巾のごと月見草                  渡辺誠一郎 

    日盛りの川底水蠆の顎がある                鎌倉 道彦

    吟行は日日の買物茄子トマト                安達  幸子

    滝壺の渦を出る水七十代                  牛丸  幸彦

    団塊世代アイスクリーム溶けかけて             丸山みづほ 

    億年のこれも一端蜥蜴の尾                 鯉沼 桂子

    しづくして海を弔ふ大花火                   唯木イツ子 

    みな違ふ涙の濃度八月来                  益永 孝元

    葡萄からすれば人など皆孤独                須藤  結

    大欠伸するために口日向水                 草野志津久  

    亡き兄の白浴衣から夜の風                 髙橋 薫

    誕生より始まる余命桃啜る                 後藤 悠平





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