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2016/12 №379 当月佳作抄
ムツオ推薦
産道に道ははじまり露の音 渡辺誠一郎
底びかりして蟋蟀の眼力は 上野まさい
玄関の玄の暗がり石蕗の花 我妻 民雄
白芙蓉幾度も羽化繰り返し 大場鬼怒多
帰化僧の吐息かうすばかげろうは 沢木 美子
百叩きそれも良きかな木の実なら 蘇武 啓子
頭の中の晴れ渡るまで草むしり 秋元 幸治
しぐるるや原発見える小学校 植木 國夫
空壜を吹き秋虹を呼ぶという 土屋 遊蛍
曼珠沙華指の先まで血はかよふ 斎藤真里子
泣き噦じゃくるかに朝顔の萎みけり 大久保和子
マッチ擦る束の間もなし霧の海 栗林 浩
さみしくて声の出さうな藁ぼつち 清水 里美
悪路王の鼻の穴から冬の風 平山 北舟
寒昴古き木彫の熊の眼に 千倉 由穂
潮騒に色ありとせば新松子 山田 桃晃
明日あると思う煩悩根深汁 安達 幸子
歪つなる目玉焼ほど秋思あり 佐藤 茉
山霧や絵本に戻る狐の子 𠮷野 秀彦
うぶすなを国土と記す寒さかな 樫本 由貴
秋風のしみる靴底金欠ぞ 及川真梨子
被曝せる祖霊の山河鳥渡る 橋本 一舟
文は濃く紅はうすくとけら鳴けり 草野志津久
縄文三十路われら八十路の夜長かな 河原 千秋
月光の立棺として摩天楼 江原 文
流星や今のど元を水通る 棟方 礼子
次々と鍵盤沈み野分来る 髙橋 薫
秋晴や山肌に海ありし跡 上田由美子
秋風や絵本の角の歯形跡 佐野 久乃
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パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
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