小 熊 座 2018/5   №396  特別作品
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      2018/5    №396   特別作品



        猫の位置         中 井 洋 子


    いちめんを切り岸にして猫の恋

    銀紙の皺の表紙絵春よ来い

    明け方の雛はもとの横並び

    葭焼きの触れ一枚の回覧板

    紅梅や寸分たがはぬ猫の位置

    紅梅のいまの空なり七十代

    人体に害無しといふ害花なづな

    傷ついて言葉もどりぬげんげん田

    たはむれに蝶を除ければ又も蝶

    チューリップの赤は覚えし数の内

    しもつけの予報通りの木の芽雨

    陽炎に取り込まれたる我木綿派

    ちちははの言葉に励み春北斗

    竹林に在り一頭の蝶として

    花菜明りその奥授乳明りかな

    みかづき村へさそはれて春三日月

    冷蔵庫の中身に時間さくら咲く

    椿油なじます伏し目おぼろの夜

    よみのくにへゆくにみづたまワンピース

    縄文時代の空のかけらの桐の花



        日 月          須 﨑 敏 之


    被曝野や鳥獣虫魚連鎖す春

    樹頭に腐卵虹を吐きつづけて居しが

    痛み悼む三月場末ネオン散る

    ニホンザルの春や染色体荒野

    雪に羽華を散らばり被曝移る

    ホトケノザ微量セシウムを座視す勿れ

    むらさきは菫の深傷道の辺に

    被曝万年もぐら息継ぎてはもぐる

    ありていに言えば被曝野亀鳴けり

    被曝杉年輪加え注連吹かる

    三月は忌み月核雨野を浸し

    つちふるや被曝マップが付録され

    料峭や森の輪廻の染色体

    原発のささくれ不毛蜃気楼

    白地図や原発廃炉かぎろいぬ

    底打つ線量乗込鮒の狂おしく

    たれ流しの日月原発沖根魚

    悼む三月海に山彦吹きわたり

    寒極む父祖の沃土を汚染積

    死せば行く被曝以前の花の下






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