小 熊 座 2018/6    №397 当月佳作抄
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     2018/6   №397   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    心臓に貼りつくことも飛花落花               渡辺誠一郎

    血の管の籠なり人もうぐひすも               増田 陽一

    突くほどに紙風船が懐きくる                 沢木 美子

    海光のかすかに届き地虫出づ               小笠原弘子

    石子詰の石の重さや青楓                  𠮷野 秀彦

    さざ波は衿を正して冴返る                  浪山 克彦

    耳奥に波の音あり花疲れ                  田中 麻衣

    春の雲どこから食べてやろうかな              髙橋 彩子

    初潮ありて閉経のあり養花天                大久保和子

    さくらさくら家にもありぬ青春期                草野志津久

    汚染水のタンクの上の春埃                  平山 北舟

    深海魚桜吹雪を知つてゐる                  斎藤真里子

    なんじゃもんじゃの芽吹きや大志なけれども        永野 シン

    本所より我につきくる紋白蝶                 あべあつこ

    影までもひらり弾ませ黒揚羽                 一関なつみ

    春空に両手浸して遅刻せり                  千倉 由穂

    永き日の句座となりたる雲のあり              関根 かな

    さくらさくら廃校にある百柱                  髙橋  薫

    水草生ふ被曝史のまだ一頁                 大河原政夫

    春愁の端つこ過る新幹線                   唯木イツ子

    桜枝垂れ地に届きけり神隠し                川原アヤ子

    オブラートの様な昼月卒業歌                千葉 悦重

    若葉から青葉となりし地上地下               おとはすみ子

    散る桜一片ごとの千の顔                   亀山 行房

    東京に暗渠身体に洞ろ春の宵                杉  美春





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