|
|
2019/4 №407 特別作品
連 鶴 坂 下 遊 馬
から回りの鉛筆削亀鳴けり
新宿の更地十坪春の土
白鳥の首潜るたび空動く
蝙蝠形の取つ手の襖帰り花
旧邸の玻璃戸の歪みしゃぼん玉
斎場や白鳥の声ふいと止む
幼霊に連鶴供す春の雪
さざなみの枯蓮縫ひて影の濃し
風光る二代で終わる寫眞店
男坂狛犬の目にある余寒
旧邸の閨閥の図や春の鳶
春光や影なき鳶の笛ばかり
一秒も億年もみな朧なる
みちのくの屋台骨なり遠雪嶺
鯨幕に結界の闇春の闇
一湾の春日折れゐる玻璃戸かな
春の夕古書店街の匂ひかな
夕空は鳥の国なり日永し
水平線に光芒のあり浮寝鳥
縁側の足踏ミシン春の夜
母の春 斉 藤 雅 子
信じるというこの一言芽吹山
縦列駐車白蝶に案内され
満点星の花己が影消すほどに
真夜中を幽かに叩くががんぼう
コトナカレコトナカレコソホトトギス
狼を待つかに長瀞の一つ岩
野州路の年の始めの遠筑波
海鳴りの碧さに開く野水仙
ぶれずして咲き揃いおる水仙花
虎落笛が次の一手を打ち砕く
穭田は兄の終の住処なり
大寒の残照に雲の二三片
大寒の入日に吠える犬を引く
オカリナ聴くよう冬日綾なす杉並木
太初とはこんな色とも寒夕焼
日日の片仮名づくめ冴返る
浅春の堤遠廻りせよと
梅月夜罪悪感なき間は恋
踝をやわらかくする梅一輪
百年を生き抜く知恵やかぎろえり
|
パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
copyright(C) kogumaza All rights reserved
|
|