小 熊 座 2019/4    №407 当月佳作抄
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     2019/4   №407   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    陽明門煮凝のごと濡れており        渡辺誠一郎

    みづ色の地球は見えず犬ふぐり      我妻 民雄

    許されて絵を描く如し春の水        津髙里永子

    着ぶくれや見えざる星の見えてくる     日下 節子

    山はみなよき名をもちて春を待つ      小笠原弘子

    生きて死ぬそれだけのこと春の虹     布田三保子

    寒三日月あれも昭和の一欠片       武良 竜彦

    完膚無き今日の凍空鼻を擤む       髙橋 彩子

    雑踏は人間の音シクラメン          郡山やゑ子

    歩行器に伝はる地球凍てし音        八島 岳洋

    塩害の杉の切株春の空           中村  春

    寒雷や絡みて解けぬネックレス       斎藤真里子

    淋しくはないかと傾ぐ冬薔薇         永野 シン

    蠢きのうねりは琥珀の蟻にまで       𠮷野 和夫

    紅梅の香に志ほがまの溶けてゆく     佐野 久乃

    黙読の黙の中なる寒昴            山野井朝香

    心臓の形の種を蒔きて逝く          須藤  結

    えんやどつととしほがまさまの梅ひらく   平山 北舟

    除染夫の軍手合掌して凍る         植木 國夫

    時刻表になくても確か春の風        丹羽 裕子

    墨束や豆大福と猫柳             村上 花牛

    いつも音しているアパート春の宵      よしの公一

    草青む母系絶えしが母系の血        田中  充

    花を待つ鳥・虫・魚も幼霊も         丹羽 裕子

    春愁がトイレにこもりっきりである      菅原はなめ

    熟柿喰う安達ヶ原の婆のごと        齋藤 千冬

    型抜きに抜かれ白鳥つぎつぎと       小田島 渚





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