小 熊 座 2019/7    №410 当月佳作抄
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     2019/7   №410   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    天体や新馬鈴薯に鍬の傷                  増田 陽一

    囀を鋤込む土葬ならばよし                  春日 石疼

    改元の変わらぬ地べた羽抜鶏                渡辺誠一郎

    蓮華田の風につられて踊り念仏               沢木 美子

    雪代のどこ曲っても夫が居る                永野 シン

    夜濯や海遠くして海の風                   郡山やゑ子

    息吸って吐いて雲浮く春隣                  久保 羯鼓

    人間に乳首の二つ花の冷え                 小笠原弘子

    たんぽぽの絮のひとつとなり海へ              橋本 一舟

    一合の米研ぐ水も夏に入る                 日下 節子

    白蝶は出入の自在木下闇                  瀨古 篤丸

    咲ききって梔子光の重さなり                 山野井朝香

    海嶺からつながる新緑までの距離             柳  正子

    新緑がさざなみとなる鴉の目                坂下 遊馬

    家霊ぐるみ海市となりて今日あたり            佐藤  茉

    生きてゐる途中で出会ふ若葉風              唯木イツ子

    天球の中へ紋白蝶放す                   及川真梨子

    整然と植えられて苗寂しかり                水戸 勇喜

    有料の牡丹も墓地も見て帰る                森  青萄

    花映る水は浪江も東京も                  後藤よしみ

    アフリカのような夏空プルトニウム             岡本 行人

    光りつゝ傷つきやすく汗の脛                 樫本 由貴

    母のない子にも母の日近づきぬ              水月 りの

    換気扇だらけの街の熱帯夜                 菅原はなめ

    薔薇咲かせ咲き乱れさせ主の死              草野志津久

    蛙げろげろ開拓村の詩となれり               三田村伸子

    鑑真の御目ぬぐいし若葉かな                髙橋かおる

    地の火照り空に伝わり鳥交る                堂園 正広





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