小 熊 座 2019/8    №411 当月佳作抄
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     2019/8   №411   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    父の忌の雷火の匂ふ松の幹              土見敬志郎

    ひきがえる恋するものはうらがえる          渡辺誠一郎

    折り取りてひるがほおそろしくなりぬ         上野まさい

    蕗の葉に包んだはずの蝸牛              阿部 菁女

    草笛の音色は空の青の色               永野 シン

    ががんぼは浴室が好き来ては死ぬ          我妻 民雄

    転生の吾子かと思うひかる紙魚            沢木 美子

    花茨白には白の意志のあり              小笠原弘子

    老ゆるまたそれも力や柿若葉             丹羽 裕子

    蕗の葉の逆子のように反転す             森  青萄

    白玉や死ぬまで生きるだけのこと           神作 仁子

    夕凪や赤子の如く島の寝て               伊澤二三子

    地の毒を吸い陽炎は揺らぐなり            𠮷野 和夫

    虫塚の無音の時間大夕焼               佐藤 みね

    雨音は天のつぶやきさくらんぼ             斎藤真里子

    前髪に重さありけり夏の雲               菅原はなめ

    死は永く生はみじかし豆の花              野田青玲子

    むかさりの止め唄青田の返し唄            山田 桃晃

    万緑やいつしか吾も鳥心地               林   哲

    さりながら愚直が取り柄蝸牛              椊田 浩子

    サイゴンの西日が背に憑依する            神野礼モン

    はぐれゐてかはほり呼んでしまひけり         佐藤  茉

    踏まれても踏まれてもなお桜の実           後藤よしみ

    子を抱いて揺れる大地に棲む螻蛄も         須藤  結

    五月鯉の目玉のなかに津波まだ            小田島 渚

    鈴蘭千の鈴振る母は子にもどり            山本  勲

    沖縄の有刺鉄線沖縄忌                 曽根新五郎

    輪中村海より低き青田風                堂園 正広

    牛蛙声立てるたび村揺らぐ               水戸 勇喜





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