小 熊 座 2019/10    №413 当月佳作抄
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     2019/10   №413   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    東京を丸ごとたたく夕立かな                渡辺誠一郎

    整然と暑し煉瓦のアウシュビッツ              津髙里永子

    地球儀に凹凸のなし秋隣                  小笠原弘子

    新涼や深閑といふ音は無し                 我妻 民雄

    川守として山椒魚は星まみれ               土屋 遊蛍

    余生にも残生のあり土壜割                 山田 桃晃

    秋風につけて消す紅ここふくしま              久保 羯鼓

    金魚にも空はありけり飛行船                栗林  浩

    ビール缶握り潰せば流星群                 春日 石疼

    胸中の陰刻照らす夏の月                  関根 かな

    チョコが溶けゆく父亡きあとの終戦日           大久保和子

    妻の掌で天の氷菓となりし月                𠮷野 和夫

    片蔭に王国ありて猫の髭                  布田三保子

    蟬時雨山河横隔膜を張り                  須﨑 敏之

    裏に太き配管のあり甲虫                  樫本 由貴

    月面の重力軽しレモン水                  菅原はなめ

    兄になるはだしと父になるはだし             佐野 久乃

    吾が弱音さざなみとなり水中花              山野井朝香

    夜店の灯鈴かすてらの弾むごと              岡村 直子

    黄泉の水吸ひ揚げてをり青葡萄             長谷川克史

    潮騒や一樹の下の蟻の国                 斎藤真里子

    生も死もミカドアゲハの夢の中              菅原 若水

    夏の陽のような若人征ったままに             丹羽 裕子

    金魚玉世界いづこも歪みゐる               小田島 渚

    木の影の水際にゆがむ残暑かな             伊澤二三子

    息きれてもまだ抜けきれぬ蟬しぐれ           森  青萄

    眼窩にも底のあるなり油照                小野 道子





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