小 熊 座 2020/12   №427  特別作品
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      2020/12    №427   特別作品



        ダンゴ虫
              ~季語とするに弱いと納得せざるを得なかった二十句の試み~

                           春 日 石 疼



    蚰蜒百足白蟻ですら夏の季語

    父の忌を動くものありダンゴ虫

    ダンゴ虫次の小石も攀じ登る

    伸び上がり雲伸び上がりダンゴ虫歩く

    ディアベリワルツかく弾けとダンゴ虫

    ミズナラの走り根深くダンゴ虫

    南無阿弥陀南無捨聖団子虫

    ダンゴ虫この世は不要不急なり

    マルムシと呼ぶ大阪の人やさし

    こそばゆしダンゴ虫掌に転がせば

    こそばゆしダンゴ虫掌に歩かせば

    突つくから怒つてみせろダンゴ虫

    シデムシの屍まぢかをダンゴ虫

    フレコンバッグに死せる無数のダンゴ虫

    ダンゴ虫ヒトに進化といふ病

    輪廻するなら下闇のダンゴ虫

    ダンゴ虫辿る紫蘭の鉢の縁

    大夕焼見ずダンゴ虫歩くなり

    星月夜その片隅をダンゴ虫

    ダンゴ虫後ろ姿へ虎が雨



        山 彦          佐 竹 伸 一


    逢いに来い両眼に螢灯すから

    死ぬならば海へと続く大花野

    稲刈の日暮れ両眼に火を点す

    溝蕎麦の路へ少年探偵団

    輪唱は子らと山彦天高し

    マスカット光の房を切り離す

    十六夜の光に泥の手を濯ぐ

    群れながら光となりぬ秋の蝶

    熊の背に山毛欅楢の実の生らぬ森

    届かぬは小鳥へ分かつ山葡萄

    付いてくる羊雲あり大花野

    改札をくぐるは独り羊雲

    囂囂と風は紅葉せよと言う

    紅葉降る太郎次郎の在りし家

    霧深し渓に男湯女の湯

    短日や子の無き村の滑り台

    名物は岩魚のマリネ山紅葉

    飼い主はどこか遠くへ猫じゃらし

    毒を吐き男去りけり秋の暮

    羚羊とその眼の中の我に雪



        いつもと違う夏        中 鉢 陽 子


    駄菓子買う小江戸の町の柿紅葉

    コスモスを味方につけて弾み行く

    草の実をつけてマスクはあごの下

    もちゃもちゃの貧乏かづら埋める村

    悔しさの八つ当り食う秋の蠅

    新酒酌む一メートルは離れよう

    再会の思わず握手鰯雲

    ねこじゃらし肩ふれ合って遊びたい

    はじめての刺子楽しむ夜長かな

    開墾の父の残せし竹を伐る

    江戸野菜「早稲田茗荷」はその一つ

    太陽に両手を広く菊日和

    尼寺の茗荷づくしの昼御飯

    市営バス落葉と乗って定義山より

    喪帰りのうがいする目を星流る

    柿むくや縁側の日と空の青

    野仏は赤のまんまの真中に

    鬼やんま「いつもと違う夏」終わる

    仕立屋のセピア色濃くカンナの黄

    いなびかり寝顔健やか有難く





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