小 熊 座 2021/2    №429 当月佳作抄
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     2021/2   №429   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    自粛して今裸木にならんとす          渡辺誠一郎

    綿虫の指に触れんとして触れず        土見敬志郎

    雛本そのまま冬の鳥になる           沢木 美子

    ゼンリンの山に転がす木の実独楽       髙橋 彩子

    マスクの世言葉を隠し声隠し          津髙里永子

    夕焚火みな少年の眼で笑う           佐藤 みね

    労いを労われおり一茶の忌           𠮷野 秀彦

    蓮根掘もっとも早く暮れるなり          須﨑 敏之

    浪江焼きそば旨くて哀し小春の日        丹羽 裕子

    聖樹の灯何も抱かず犬眠る           松岡 百恵

    甘藷の穂ニライカナイへうねり出す       中村  春

    寒き世のキッチンこれも世の景色        中井 洋子

    小春日の痒いところに届かぬ手         田中 麻衣

    凍蝶は湖上に泛ぶ月の色            坂下 遊馬

    川は海へ海は宇宙へ浮寝鳥           菅原はなめ

    木枯の星賜はりぬ誕生日             斎藤真里子

    冬天の透きゆく穢土の透きゆけよ        後藤よしみ

    遠野までドア開くたび冬菜畑           江原  文

    牛よ牛白息に唾混じりをる            𠮷沢 美香

    雪空や灯を満載に停泊す             塚本万亀子

    村じゅうの彩を吸い上げ冬の虹         阿部ゑみ子

    銀漢は水のみなもと初硯             龍  太一

    ポリ袋の腹一杯の空つ風             亀山 行房





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