小 熊 座 2021/4    №431 当月佳作抄
TOPへ戻る  INDEXへ戻る



     2021/4   №431   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    息止めて生き身を剝す牡蠣割女              渡辺誠一郎

    三月や嗚咽の洩るる潮溜                  土見敬志郎

    わが肉に喰ひ入る義足春隣                 八島 岳洋

    死化粧の妻の可愛や雪こんこん              野田青玲子

    涅槃会や幹を伝はる雨のすぢ                津髙里永子

    馬鈴薯の芽が陰嚢の如きより                須﨑 敏之

    恋人の目尻うすらひほどの皺                我妻 民雄

    腹立ちもこの世での些事冬青空               中井 洋子

    家中の柱の数や春の暮                    柳  正子

    雨音を重ねし色や糸柳                    平山 北舟

    胸に脚寄せて初蝶風にのる                 江原  文

    足跡の凍れる砂場日の出前                 髙橋  薫

    人間の世は蛤の大あくび                   千倉 由穂

    浮雲は山祇の舟日脚伸ぶ                  椊田 浩子

    薄氷に鼓動のありと教わりし                 山野井朝香

    鳥籠に蒲団被せたように死は                草野志津久

    耕さるごとくにゆるぶ春の雲                 樫本 由貴

    一本の藁のしとねに浮氷                   伊澤二三子

    羽根仕舞ふやうなる春の潮なりけり             𠮷沢 美香

    微動だにせぬ寒卵割りて呑む                小田島 渚

    寒明の湖底木霊の集まれる                 斎藤真里子

    風花の睫に触れて暮れにけり                塚本万亀子

    復興の運び積まれし土凍る                  小野 道子





パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
  copyright(C) kogumaza All rights reserved