小 熊 座 2021/6    №433 当月佳作抄
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     2021/6   №433   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    料峭の覆面をして首都高へ                渡辺誠一郎

    天心に釣られてゆくか春の虹               津髙里永子

    うぐひすにたつぷり鳴かれ筋肉痛             中井 洋子

    老いてなお夢のつづきの土筆煮る            沢木 美子

    畝起こす限界集落の魂が                 須崎 敏之

    西行の死後のしら雲弥生尽                武良 竜彦

    鶯の声を映せり潦                      永野 シン

    ゆく春や波のかたちに波動き                柳  正子

    いのち減る迅さに瞑る花吹雪               久保 羯鼓

    すずめ来て乘りたさうなり花筏               郡山やゑ子  

    月光を吸いたるのちの花の色               土屋 遊蛍

    春星を蔵し鱮のきらめけり                 あべあつこ

    ひよろひよろと洩瓶が哭けり春の暮            八島 岳洋

    駅裏の保線区事務所菜種梅雨              大河原真青

    生まれ出るもの皆しわくちゃぞ牡丹の芽         𠮷野 秀彦

    菜の花を追つて行つたら背が伸びた           遅沢いづみ

    がじゅまるの抱きつくように伸びており          千倉 由穂

    きざはしに黄砂掃き積む出雲かな             樫本 由貴

    焼却炉めきて夕焼のワンルーム              奥村 俊哉

    アマビエがますます可愛春深し               鈴木  隆

    どこまでが此岸であるか夕桜                八島ジュン

    昼半球の端にてひとり犬ふぐり               髙市  宏

    鳩の目は恐ろしき闇榧の花                 亀山 行房

    汚染土の穴出で蟇の轢れおり               石川 澄子





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