小 熊 座 2021/11    №438 当月佳作抄
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     2021/11   №438   当月佳作抄

                             ムツオ推薦


    萩の風少しはなれてよく見える          渡辺誠一郎

    母の忌の畳の上の蠅叩き             土見敬志郎

    機織虫になれさう胡瓜刻むたび          阿部 菁女

    鰯雲胸の奥処の襞にまで             久保 羯鼓

    水晶の念珠つめたき大暑かな          丸山千代子

    虫の闇壊さぬやうに閂す              水戸 勇喜

    止まらねばががんぼだとは知らざりし      栗林  浩

    鯖雲と朽桟橋とつながれり             髙橋 彩子

    老耄の覚めよとばかり鵙の声           増田 陽一

    水母食ふ水母その水母食ふ水母         春日 石疼

    地下鉄のホームに滑る秋の風           宮崎  哲

    死はそこにあるや露草露を溜め          丸山みづほ

    死顔は美しきもの空高し              水月 りの

    摩文仁村の土の声なり秋蛍            中村  春

    幼霊の零せしものか露ひとつ            平山 北舟

    三毒の心に赫し彼岸花               𠮷野 秀彦

    耳なくも雨に露草頷きぬ               瀨古 篤丸

    秋晴れの盲導犬のまなこかな           関根 かな

    ヒメムカシヨモギ海からきた電車          田村 慶子

    新米に噴きこぼれるといふ力            杉  美春

    がやがやがやと団栗の背くらべ          村上 花牛

    不立文字鈴虫の鳴き始む             佐野 久乃

    やませ復た人食ひしといふ碑の村に       長谷川克史

    妄想は晩節の糧稲の花               横田 悦子

    星飛んで貝殻骨がさみしがる            阿部ゑみ子

    この山に火を噴く力鳥兜               兵藤 康行

    秋刀魚泳ぐ阿修羅の細き腰のごと         髙橋美紀子





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