小 熊 座 2024/2   №465  特別作品
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     2024/2    №465   特別作品



      枯野道      佐 藤 み ね


    山国の湖の群青枯野道

    朝空を奪いあう声沼太郎

    枯薄金のひかりの波残る

    襖絵の小さき山河冬に入る

    鉄錆の匂うコンクリ小六月

    葱囲う根元より来る日暮かな

    裸木の大地にもどる光かな

    裸木や生まれたなりに陽に向う

    冬晴や飛行機雲の尾の長し

    凍蝶の翅の痛みて飛ぶ構え

    貝塚に寒波のひかり鳶の声

    寒菊にみちる光の重さかな

    山よりの陽ざしの重さ花八つ手

    星空の畝しんしんと霜結ぶ

    裏畑の畝のかたちや霜だたみ

    寒月や森ひきしまる風の音

    冬銀河大地のきしむ蝦夷の地

    勾玉の消えぬ濁りや冬日和

    みどり児の見つめる聖樹聖夜かな

    山奥の小さき水音淑気あり



      冬 灯      江 原   文


    まだ知らぬ海その奥の冬灯

    竜骨の孤高の影や月冴ゆる

    海図よりずれる航海冬かもめ

    冬日追ふかもめは時空越えゆけり

    杭なくも冬鷗来て日の潤ふ

    客船の過ぐる埠頭や帰り花

    冬虫のすがる十字架レノンの忌

    居留地の紅の枯れたる冬薔薇

    不意という咲き方もあり冬薔薇

    文明は木を喰いつくし冬の蝶

    切り株の沈黙学ぶための冬

    月明かり寒林よりの息づかい

    空という青さをみせて裸木は

    汚染土の重きを支え霜柱

    夜を白くはがす閃光冬の雷

    木枯に吹かれて今日を遠ざける

    定席はいつも隅つこ冬の蠅

    黒板の消し跡残し冬の虹

    筆箱に遠い波音澪の冬

    電柱は冬空統べる高さかな





 
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