|
|
2024/6 №469 特別作品
蜜柑山 松 岡 百 恵
セーターから日の出のやうに一人つ子
洋館の扉の家紋冬ざるる
枯葉降る人の寿命のまた延びて
水底の枯葉吾にも死生観
内海の光だまりの蜜柑山
腹の虫鳴くも動じず花八手
画面より戦争溢れ十二月
クリスマス屁糞葛の実が光る
蝋燭の胴の爛れや聖夜果つ
残照を湛へ朽ちたる石蕗の花
寒鴉歩きスマホを遠目して
裸木の支ふる空が重すぎる
鎌鼬胸の辺りの影踏まれ
母強ハし母の死怖し室の花
白梅の芯に赤子の尻の色
春愁捩子の頭が馬鹿になり
伐られつつ永らへてをり養花天
鯨より届く波あり長閑かなり
黒点となりゆくわたし鳥雲に
笑窪といふ小暗きものへ春灯
食べる 小笠原 祐 子
ポタージュに今日をかきまぜている四温
ゆずポンをかける煮る焼く寒鴉
フライパンを焦がしきったら梅探る
練りきりの鬼を一口厄落とし
節分会巻簀の表裏を知る
オリオンやゆでたまごはつるりと剝ける
冬うららおやつの泉が涸れている
日脚伸ぶポットで出される紅茶かな
箱買いの文旦となりのデスクにも
春浅しかもめのたまごはミニがよし
アボカドの芽は出るらしい寒の明け
袖口の染みとれぬまま二月尽
鶏肉の皮引き剝がす牡丹雪
春の宵ひだのきれいな餃子かな
すり流しの熱がしみいる春の泥
買い置きの塩は珠州なり春浅し
アーモンドかじる歯医者を終えて春
米櫃に米を満たすや余寒ごと
簡単なことと言うなよ菜飯炊くよ
弁当を買うか作るか春休み
|
|
パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
copyright(C) kogumaza All rights reserved
|
|