小 熊 座 2024/8    №471 当月佳作抄
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     2024/8   №471   当月佳作抄

                             ムツオ推薦


    かの翁無能無才とや田水張る           渡辺誠一郎

    琉金がはつたと原子炉を睨む           久保 羯鼓

    旱星わが血わが骨そひ佇ちぬ           川口 真理

    蜘蛛の糸成層圏へ足がかり            佐川 盟子

    とんがつて生きよ年寄り蟻の国           山田 桃晃

    素潜りのごとき句作りかき氷            千倉 由穂

    蠅叩き戦あろうがなかろうが            植木 國夫

    大阪に飛び込んでゐる溽暑かな          郡山やゑ子

    父母のいた日も忘れシャボン玉          髙橋 彩子

    全山は器でありぬ滴れり              村上 花牛

    待つことに厭き誘蛾灯見ておりぬ         蘇武 啓子

    如何に巣を死守せん蟻は蟻殺す         龍  太一

    死を聞けばまず聞く死因ところてん        よしの公一

    何処にも殖えどくだみと御老体           横田 悦子

    屋根の上の星てのひらのつくしかな        山本  勲

    バナナ食う世界は一つ本当か           岡本 行人

    靴底に病葉一枚オカマバー             関口 渓人

    蝌蚪生れ子盗ろの歌の聴こえ来る        小島ノブヨシ

    廃炉への道のかたはら田螺鳴く          髙市  宏

    チェルノブイリに残る泉や雲の峰          大久保和子

    雨のように蛙鳴く夜カフカ読む           夏谷 胡桃

    胎児のごと夏の雲光り過ぐ             髙橋かおる

    干涸びし蚯蚓の重さ誰か知る            川名まこと

    産声を押し出す力夏の川              檜野美果子

    水口の音聞きをれば父祖のこと          黒河内玉枝

    岩漿はのつたりのたりアイスクリーム       角一  恵

    遺失物室六万本の傘へ梅雨            清正 風葉

    靄の鳩ハンカチに折り込まれ消ゆ         羊   洵

    聖堂に君子ぞろりと梅雨寒し            石川 澄子





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