小 熊 座 2024/9    №472 当月佳作抄
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     2024/9   №472   当月佳作抄

                             ムツオ推薦


    階段は常に斜めや夏はじめ            渡辺誠一郎

    冷房の一方的な死後の風              津髙里永子

    目鼻口どれも尊とし梅雨最中            久保 羯鼓

    北辺に柳絮飛べども う、暗いな          増田 陽一

    眠られぬ烏柄杓が咲いたから            大西  陽

    水中花夢を見られぬ少女たち           小田島 渚

    輝きすぎて見えなくなりぬ夏帽子          栗林  浩

    わが羽音なき淋しさよ白鳥座            川口 真理

    竹皮を脱げど還らぬ画学生             植木 國夫

    炎昼や死者の寄せたる人の列           宗像眞知子

    冥土への途中夏帽新調す              佐藤  茉

    青胡桃川は国境など知らず             長谷川克史

    輪廻とは貝の一巻き夏の雲             千葉 和珠

    結葉の窓辺で父の火葬待つ             須藤  結

    如何生きても狗尾草に敵はない           水戸 勇喜

    人類は大河に添へり桐の花             髙市  宏

    二の腕のタトゥーの蝶も梅雨の底          横田 悦子

    ガザにても鳴くかと問わば牛蛙           後藤よしみ

    夏空を忘れぬように立ち止まる           一関なつみ

    夕焼けに絵の具を垂らし恋終る           岡本 行人

    帰村できずわれ夏の雨の一滴            山本  勲

    一朶のあじさい一族色の雨こぼす          髙橋美紀子

    七月の舟木漏れ日の一欠片             𠮷沢 美香

    蔦青葉もう抜け殻になつた家             檜野美果子

    まぼろしの世や梅雨菌どつと現れ          馬場 小零

    緑陰や廃墟の城の王の椅子             野良坊

    紙の音は神のこゑなり星祭              髙野  香





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