永井陽子と俳句
あまでうすあまでうすとぞ打ち鳴らす豊後の秋のおほ瑠璃の鐘
ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり
十人殺せば深まるみどり百人殺せばしたたるみどり安土のみどり
一瞬にしてその三十一音に目と心を奪われる永井陽子の歌の世界。永井の出発は俳句であった。
あまでうす(モーツァルト) と豊後の鐘との意表をついた取り合わせは、際立ってうつくしい韻律と音楽性により、スケールの大きな不思議な景色へと読む者を誘う。
二首目の永遠とも思われる時の流れ。〝とほけれど〟の一語に全てを託し、一首を貫くぎりぎりまでの省略は、短歌というよりも、洗練の極みの俳句の感覚に近い。衝撃的な三首目。みどりのリフレインが、結句の安土のみどりへつながってゆく。その切れの鋭さスピードも俳句を連想させ、とても興味深い。
(真理)