戦後八十年
物心ついた時、家の前に立てば生駒山の連山が見え、美しい山だと見とれた。しかし山から眼を離し町全体を眺めれば焼夷弾で焼かれた町や軍需工場の残骸が残っていた。だが子供にとって焼け跡にはそれなりの魅力があり遊びには事欠かなかった。特に縞蛇が多く、蛇穴を探しては卵に触るのが面白かった。縞蛇の卵は柔らかく指で撫でるとペコペコとへっこんだ。ただ青大将の卵だけは触らなかった。ガキ大将から「青大将は大きい蛇だからそっとしておけ、蛇の仕返しは怖いぞ」と真剣に言われた。焼け跡は子供にとって魅力的な場所だった。爆撃をうけた工場の跡には雨水が溜まり、蝌蚪がうじゃうじゃと泳いでおりザリガニもワンサといた。まるで秘密のジャングルのようで好奇心を十分に満たしてくれた。私には分からないのだが、ボタンをクリックして遊ぶ今の子供は何が楽しいのか。今では蛇もガキ大将も消えて終った。
(倫子)