小 熊 座 2021/3    №430 当月佳作抄
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     2021/3   №430   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    倒木の声を漏らさぬ淑気かな             渡辺誠一郎

    初蝶は出雲阿国かもしれず              沢木 美子

    あらたまの息を吸うても一人なり            日下 節子

    天窓に波の音あり寒造り                土見敬志郎

    雪霏霏と老人ホーム寿げり               浪山 克彦

    ポケットに葛根湯と枯野星               郡山やゑ子

    口びるに雪の一片重たかり              髙橋 彩子

    御降りや廃炉に向かう髭面に             植木 國夫

    ダイヤモンドダストその奥に狼声            大河原真青

    寒夕焼神のみ残る島となり               中村  春

    「苦海浄土」猫の寝息が炬燵より           丸山みづほ

    氷柱太る爺さま婆さまの眠る頃            中鉢 陽子

    マスクして浮世の眼鏡曇らする             平山 北舟

    冬籠り眼鏡を探す眼鏡欲し               草野志津久

    荒魂を乗せるに軽し雪ばんば             江原  文

    木には木の体温のあり冬木立             髙橋  薫

    命なきこと美しや雪浄土                長谷川克史

    白息を吐いて無音の汽車となる            菅原はなめ

    病室は巣穴のごとし春を待つ             村上 花牛

    山峡は甕の底なり寒の月               鎌倉 道彦

    古釘と丹波黒豆寒波来る               山野井朝香

    良く働く妻と掃除機寒に入る              よしの公一

    霜柱踏めば朝日の音がする              伊澤二三子

    たかがマスクされどもマスク朝はパン        遅沢いづみ

    霜柱古代を駆ける唄となり               岡本 行人

    青空の張りつめし音冬木の芽             佐藤 みね

    海豹は眠り流氷は軋みけり              斎藤真里子

    風花や友といたはず見失う              大坂 宏子

    初氷いつものように雀来る               黒河内玉枝

    葱の畝高く揃いぬ赤城山                あべあつこ





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